Rioオリンピック 3
M400m決勝
ファン・ニーケルク 43.03
ジェームス 43.76
メリット 43.85
セデニオ 44.01
シバンダ 44.25
ハミス 44.36
タプリン 44.45
ハドソンースミス 44.61
とんでもない記録が誕生した。
結果的に良かったという見方もあるかもしれないが、8レーンに入った時はやはり心配した。
しかし相当自信があったのだろう。
勝つ自信だけに留まらず、世界新を更新出来るという自信が。
自分のレースに集中していたというよりも、自分のレースに集中できるだけの大きな実力差があった。
とにかく動きが変わらない、落ちない。
もちろん実際は減速しているし後半は鈍ってきているのだが、芯の部分はどれだけ飛ばしてもぶれることはない。
上手く表現できないが、みぞおちあたりを体の中心と見立てるならば、ファン・ニーケルクの全ての動きはその中心を軸に美しく乱れのない円を描くように回転しているとでもいうのか。
その回転がハイスピードでありながらもリズムが崩れることなく、最初から最後まで持続されるため誰もついていけない。
正式なラップかどうかわからないが、各区間の通過タイムは以下の通りなのだとか。
100m 10.7
200m 20.5
300m 31.0
ジェームスもメリットもあまりのハイペースに200m付近で「???」となったのでは。
あるいは絶対に落ちてくるはずだと思ったのではないか。
しかし落ちなかった。
また2人共あまりのハイペースに惑わされ、自身のペースが乱れたように見える。
97年の全米だったか元世界記録保持者のレイノルズが200mの通過を20.7位で通過しながらも自滅してしまったのを思い出したが(記憶が定かでないが)、20秒台で通過するというのはどう考えても無謀としか思えない。
しかしそれを可能にするのはやはり100m9秒台の走力と、そのスピードを高いレベルで効率的な動きの中に安定させる技術がなせる業とういうことか。
ジェームスとメリットも好記録だったが太刀打ちできず。
どちらが2着に入ってもおかしくなかったが、序盤は滑らかな加速を見せながらもバックストレートでより迷いの生じたメリットの方がそこで無駄な力を使ってしまい、その分だけ最後の直線での減速も大きかったと言えるだろうか。
ジェームスもファン・ニーケルクに乱された面はあると思うがその中でも200m以降は動きを制御する冷静さがあったと思う。
ただ想像以上にファン・ニーケルクが最後まで落ちてこなかったということではないか。
セデニオも準決勝の走りが自信をつけたのか43秒台に迫る好記録。
そしてシバンダはなんと18歳!?
記録はもちろんすごいが、このレース展開の中で自身最高の走りを出来たことが素晴らしい。
それにしても放送時点からそれ以降も今回の結果に対するメディアの扱いが薄すぎるように思う。
ファン・ニーケルクにスター性がないからか、ボルトへの関心が高すぎるからからかは分からないが、伝説の記録を素晴らしい内容で塗り替えただけにさみしい限り。
しかし個人的にはよりファンになった。
ぜひともボルトとの300m対決を実現させてほしいところ。
~続く~
Rioオリンピック 2
M100m決勝+0.2m
ボルト 9.81
ガトリン 9.89
ディグラス 9.91
ブレイク 9.93
シンビン 9.94
メイテ 9.96
ビコ 10.04
ブロメル10.06
レース後、選手自身が言うように準決勝から決勝までの間隔が短すぎたのだろう。
記録は伸びず、ほとんどの選手が疲れを見せていたと思う。
見る側はそれはそれで見どころがあるが、走る側からしたらたまったものではないか。
ボルトは準決勝の走りからすれば7台前半の可能性もあるのではないかと思えたが、そんな疲れからか上体が硬く動きもやや重いように見え、明らかに予選・準決と比べると加速するまでも加速して以降もスムーズさ欠けた。
ただ、同様に疲れていたもののガトリンのスタートは素晴らしく、ボルトは前半リードされたことによってて動きを制御された部分もあるのではないかと思う。
一矢報いたというところか。
ただそこまでだった。
本来のしなやかさはなかったものの他を圧倒するには十分なスピードを序盤で構築しており、そこに一歩一歩慎重に乗っていくだけで勝利は確実だった。
本人も40~50mあたりでそれを確信したのではないか。
それにしてもなぜ条件も体調もベストでない中でここまで「正確に圧倒」できるのか。
やはりどんな条件下であれ一歩の凄さが違うのではないか。
前に振り出された脚が頂点に達した時、膝の位置が自分の体に対して誰よりも遠く、そして高い位置にありそこから振り下ろされて接地する際に発生するエネルギーは半端なものではないのであろう。
そしてそのエネルギーを逃さないだけの柔軟なバネとしなやかさがあり、今回のようなやや雑に見える走りでもしっかりとロスを最小限に抑えた処理がなされている。
ガトリンと比べても脚が流れておらず、前で捌けていることからも技術的に上回っていることが改めて証明されたのではないか。
ガトリンはボルトに勝つには最低でも昨年並みの調子は必要だった。
つまり9秒7台前半を狙えるくらいの調子であり、中盤までに大きく抜け出る仕上がりである。
まあ昨年と比較しても仕方ないが。
しかし序盤では異次元の強さを見せ、はっきりとリードを奪い、先に述べた通り見せ場は作った。
そこからもよく粘り、「最速の2番手」の座(矛盾した表現だな)を譲らなかったことはさすがである。
自身の走りを最大限に発揮したという意味ではディグラスが一番かもしれない。
脚の回転が高速ながらも振り下ろしから接地までがコンパクトにまとめて無駄がない。
また力を入れるタイミングの感覚もずば抜けているのではないか。
華奢なようでも総合的に見て力強いんだな。
ブレイクの動きは正確で最も冷静だったかもしれない。
だがやはり現時点の実力内での話であり、一つ一つの動きの完成度が高いわけではなく勝負できる位置ではなかった。
だがそれで4位は素晴らしい。よく戻ってきてくれた。
準決勝で競ったシンビンとメイテの順位は入れ替わった。
メイテは初の決勝と思えぬダイナミックな走りだったがゴール直前はリズムが僅かに狂ったか。
対してシンビンは最後まで自分の動き粘れた。t
実力は互角だと思うが違いは上体の安定感だろうか。
シンビンは地面に対して並行するようにほとんど頭が動かない。
メイテは動きも身体も大きい分僅かな状態のブレも大きく影響してしまうのか、やや後半浮いてしまったように見える。
ビコは準決勝に引き続き好スタートを切った。
だが、やはり並ばれたり先行されるともろい。
スタート自体力んでしまった面もあるように思うが。
ブロメルは走るのさえ危うい状態だったようだがよくこのタイム、あの動きで走り切ったな。
自身の高速ピッチによるレース構成が体に染みついているということか。
ボルトはこれで前人未到の3連覇を達成。
短距離でというか、フィールド種目以外では女子も含めて初めてなのか。
200mは記録も狙ってほしいところだが、安全運転するかもね。
それ勝てるとしたらそれはそれで凄い話だが。
~続く~
Rioオリンピック 1
始まりましたね。
というか、既に4日目終了ですか。
それにしても今大会はこの時点で世界新が2つ。
しかも男子400mと女子10000mという破ることが不可能かと思われた記録において。
今日の女子3000障害でも更新されるのではないかとみていますが、記録面でも盛り上がっていますね。
さて、まずは男子100m。
久しぶりに予選の各組ごとに振り返りたいと思います。
M100m予選
1組-1.2m
K.ブラウン 10.13 Q
C.ウジャー 10.13 Q
M.ブレイシー 10.16 q
S.Ogunlewe 10.26
F.オグノデ 10.28
ブラウン、ウジャー共にスタートから中間までのつなぎがスムーズで他に並ぶ物もおらず、そのまま流れを殺さずに走り切れた。
ブレイシーはまずまずのスタートだが想像以上に抜け出せていなかったからかリズムを崩し、中間から動き切らぬままゴールを迎えてしまったように見える。
実力者オグノデはスタート直後態勢を崩し、そのまま立て直すことが出来なかった。
上位2人は流れをしっかり作った上で着順通過したのに対し、ブレイシーとオグノデは僅かなロスが大きな乱れにつながった。それは結果的にオリンピックのレベルの高さと厳しさを証明した1組らしいレースだったといえるのではないだろうか。
2組+0.8m
ガトリン 10.01 Q
D.ベイリー 10.20 Q
R.ソリロ 10.23 q
ガトリンンは昨年の世界陸上とは異なり、自身の走りのベース部分をしっかりと確認できた理想的な予選通過だったと思われる。
序盤でそこまで力を入れていなかったこともあると思うが、シャープさに欠けているのでは?とこの時点で思ったかもしれないが。
ベイリーは自身のリズムを崩すことなく通過したが、ソリロはいい流れを作りながらもの最後の僅かな油断で自滅した。
3組-0.1m
謝震業 10.08 Q
アシュミード 10.13 Q
H.タフティアン 10.17 q
コリンズ 10.18 q
これは驚いた。
謝は体幹、下半身が相当強いのか立ち上がりがやや早く見えるが、しっかりと腰が入っていてそのことによるロスはあまりなさそうだ。
また左右に大きくぶれるがそれによってダイナミックな動きを生み出し、軽やかながらも接地時に大きなパワーを与えているようにも見える。
中国はモスクワ世界陸上での張、北京世界陸上での蘇、そして今回の謝と毎回誰かが魅せてくれるな。
アシュミードはゴール手前で余裕のあるふりを見せたが結構きつかったのでは?
謝とは対照的に体が乗らず、パワーで強引に持って行ったように見えた。
タフティアンも身体がフィジカルの強さを生かして健闘した。
コリンズの動きはさすがだが、自身のスタイルとしてスタート直後にもう少し前へ出てないと厳しいか。
4組-0.5m
ディグラス 10.04 Q
ケンブリッジ 10.13 Q
蘇炳添 10.17 q
ビコ 10.19 q
マルティナ 10.22
正直この組に入った時点でケンブリッジ選手の通過はきついなと思ったがやってくれた。
ベストを出した今年の東日本実業団予選時のような軽快でリラックスした走りだった。
かなり自信があったのか、ゴール直前だけでなくその更に手前でも横を確認しており、余裕があった。練習で完璧な動きを何度も再現できていたのではないか。
まさかビコ、蘇、マルティナ全員に先着するとは思わなかった。
3人の走り自体はそう悪くなかったと思うが、エンジンがかかりきっていなかったか。
といってもビコはなめていたと思うが。
それにしてもディグラスは強く、調整力には恐れ入る。
今季のこれまでのレースとは比べ物にならないくらいキレキレだった。
5組 +0.2m
メイテ 10.03 Q
ブロメル 10.13 Q
ルメートル 10.16 q
C.グリーン 10.20 q
メイテは走りが大きいが、脚の折りたたみ自体はコンパクトというのか、上体のパワーでオーバーストライドにならないよう上手くコントロールしているのではないか。
ブロメルはスタートの飛び出し自体は群を抜いているがやはり自身が言うように怪我の状態が悪く好調時のような回転は見られず序盤から抜けることもできなかった。
ルメートルも全盛期の力はないがさすが実力者。
しっかり合わせてきた。
6組-0.8m
ブレイク 10.11 Q
ハーベイ 10.14 Q
アルハルティ 10.22
ブレイクは動きにもやや緊張があったかもしれないが、自身の走りの地盤は構築できているように思う。
起き上がるまでにややロスがあったようにも見えたが、この組では大きな実力差があり問題なかった。
ハーベイはなんとなくディグラスに似た走りに見えるのだが、やや動きが流れてしまうか。
しかしこちらも実力面からしてこの組では問題なかった。
7組-0.4m
ボルト 10.07 Q
フッシャー 10.12 Q
ダサオル 10.18 q
桐生 10.23
S.ハート 10.28
トンプソン 10.29
常に大会前の心配は杞憂に終わるんだな、と改めて思わせた今大会のボルト初レース。
怪我の心配はなく、しっかり動いている。
30mまでを築けば後は流れだけで通過できる、そんな走りだった。
フィッシャーは見事なスタートを切り、その勢いを殺すことなく通過。
スタート直後に僅かながら態勢を崩したようにも見えるがパワー・回転力があるからか問題なかった。
桐生選手は課題のスタートでやや早くに立ち上がり過ぎてしまったか?
序盤で離されて、そのまま挽回できずに走力で劣るダサオルに追いつけず敗退。
しかし、その割には冷静でロスを最小限に抑えた走りだったと思う。
世間一般的には「予選で敗退かよ」と思われるのかもしれないが、決して桐生選手に力がないわけではなく、世界の準決勝進出ラインまたオリンピックの舞台がそれだけハイレベルだということだろう。
8組-1.3m
シンビン 10.14 Q
山縣 10.20 Q
A.ブラウン 10.24
シンビンが好調を維持し、余裕をもって通過。
自身が勝負できることが確信となったラウンドになったのではないか。
そして山縣選手は抜群のスタートで見事着順通過。
伊東氏も言うように80mまでは100点だったと思う。
また結果的には1レーンというのもよかったか。
ブラウンはまずまず好スタートをきったが、山縣選手とは対照的に中間疾走へのつなぎが一旦中断してしまったかのようにスムーズさと、またパワーにも欠けた。
準決勝
1組+0.2m
ビコ 9.95 Q
メイテ 9.97 Q
シンビン 9.98 q
ハーベイ 10.03
アシュミード 10.05
ブレイシー 10.08
謝震業 10.11
タフティアン 10.23
ビコは予選と打って変わり見事な走り。
序盤で抜け出せれば敵はいないという自身の必勝パターンに持ち込めた。
とはいえ、リズムにやや乱れもありベスト時に比べると多少強引ではあったか。
それでファイナル進出をもぎ取れるんだからやはり実力者なのだが。
メイテとシンビンは予選の見事な走りをそのままに出力を上げて実力通りの通過。
お互いやや力んだと思うが勢いで潰せる位にノッていた。
アシュミードも上げてきたが今大会でベストな状態は作れなかったか。
謝は予選のようなスムーズさがなく、序盤から中盤の走りをするかのように力み、焦ってしまった。
2組+0.2m
ボルト 9.86 Q
ディスラス 9.92 Q
ブロメル 10.01 q
ウジャー 10.01
山縣 10.05
コリンズ 10.12
グリーン 10.13
フィッシャー DQ
この時点で多くの人がボルトの優勝を確信したのでは?
久々に全盛期を思わせるようなダイナミックでしなやかな走りだった。
ディグラスも硬くはなったがボルトに中盤まで食らいついた時点で他を引き離しており、決勝進出を確実なものにした。
勝負どころと捉えていたのか結果的にはこの準決勝の走りが決勝への絶対的な自信につながったのではないかと思われる。
ウジャーは相変わらず終盤の粘りが素晴らしいが、上位二人に抑え込まれてしまったかのうようにブロメルに比べるとほんの僅かながらゴールまで動き切らなかったか。
山縣選手はお見事。
正直ここまで走れると思わなかった。
オリンピックの実績でいうなら飯島氏、朝原氏を超えて吉岡氏に次ぐ位置に来たのではないか。
中盤以降力んで大きく失速するのではないかと思っていたがむしろ冷静に走り切った。
準決勝もスタートは抜群だったが予選に比べて「突っ込み過ぎない」というのか、微妙なさじ加減でもってしてゆとりを持ち、中盤以降に備えた知性に溢れる走りだったように思う。
決勝進出に足りないのは何なんだろう。
パワーといわれればそれまでだが、まずは海外でのキャリアを多く積んでほしい。
というか海外でのレースをもっと見てみたい。
そしてコリンズ。
やはり厳しかったが予選からさらに仕上げつつ、自身の強みも垣間見せた大ベテランらしい味のあるレースだった。
3組±0m
ガトリン 9.94 Q
ブレイク 10.01 Q
ルメートル 10.07
蘇炳添 10.07
ブラウン 10.13
ダサオル 10.16
ケンブリッジ 10.17
ベイリー DNS
ガトリンは予選に続き着実でいながら圧倒的な走り。
ただやはり接地までにやや「間」を感じ、キレがないか。
ブレイクはガトリンと同走してやや乱れたか。
走力面で全く問題はなく、流れもしっかりできていたとは思うが。
落選したもののルメートルと蘇はさずが。
ルメートルはやはりフィジカルが強く、最後力を抜いたようにも見えるが一旦スピードに乗ると大きな動きと身体がゴールまで失速することなく運んでくれるというのか。
蘇のスタートも健在だった。
が、どちらも全盛期に比べしぶとさがなかった、またそういったものを支える調子ではなかったということか。
ケンブリッジは悪くなかったが、これまた伊東氏が言うようにガトリンに序盤から圧倒されて焦り、力んだか。
予選が出来過ぎだったようにも思える位、普通はこんなものなのだと思うが。
ただ、これからが本当に楽しみな選手。
トップクラスと空間で並べられるようになれば十分勝負できると思われる。
決勝はまた別に書きます。
~続く~