ロンドン世界陸上 男子200m決勝
M200mf -0.1m
1.グリエフ 20.09
2.ファンニーケルク 20.11
3.リチャーズ 20.11
4.ミッチェル・ブレイク 20.24
5.ウェブ 20.26
6.マクワラ 20.44
7.サニブラウン 20.63
8.ヤング 20.64
今季のグリエフには期待していたが、まさか勝ってしまうとは。
勝因は直線で最も余裕があったからだと思うが、それはコーナーの走りから生まれたものなのだろう。
見た目の厳つさとは対照的にコーナリングは非常に丁寧で効率的。
「コーナーと仲良し」、そんな優しささえ感じる繊細さがある。
もちろん今季9秒台をマークしているそのスピード強化も大きな勝利の要因だろうけども、そのスピードを生かすためにコーナーに対して付かず離れず絶妙なポジションに位置し続ける能力の高さが凄いとでもいうのか。
所謂コーナリングの名手、というのとはちょっと違うような気がする。
200mと一体化されたコーナリングとでもいうのか、走力と自身のレースプランを一致させるために割り出された最も効率的なコーナリングとでもいうのか。
いずれにせよ余計な力を使わなかった分だけ最後まで自分のリズムとタイミングで走り抜けることができた。
ファンニーケルクは僅かだが前半飛ばし過ぎかと思ったが、そうせざるを得なかったのだろう。
準決勝の感覚からもそうしなければ勝てる射程圏に入れないことは分かっていた。
ただ今の状態では脚に限界があり、他を抑えきることができなかった。
それでもよくここまでリカバリーしたと思うし、後半力んで乱れそうになる動きを制御するテクニックは群を抜いているのではないか。
二冠はならなかったが、やはり偉大なスプリンターだ。
リチャーズは前半インレーンから詰められたことで予選、準決ほどのピンポイントで接地するような軽快な走りはできなかったが、前半どのポジションにいようとも後半追い上げる自信があったのか、最後までよく粘ってメダル獲得。
走りのタイプは全く違うが、レースパターンはケンテリスを思わせるものがある。
後半大逆転するには線が細すぎるかもしれないが、そこがこの選手の走りの魅力でもあるんだろう。
ミッチェル・ブレイクとウェブは走力を持て余したような走りといった印象。
それでもよりまとめることができたミッチェルが先着した。
もう少し前半出られるスピードがあるならば驚異的な選手になりそうだ。
ウェブは大外のレーンが影響したのもあるのか、かなりロスの多い内容だったが逆にそれだけ不安定な内容ながらも、それなりに辻褄を合わせることができるのもなかなか興味深いものがある。
マクワラは食中毒のため予選に出られなかったが、なんと救済措置でタイムトライアルを実施され見事にクリアして準決勝進出。更に決勝にも駒を進めて這い上がってきた。
マクワラの走りはとにかく上下動が少ないが、身体が浮くのを抑えているのではなく、膝から下だけで小走りする時のように、ナチュラルに浮かない脚運びができているように見える。
それだけ効率的に地面を捉えているのだろうが、反対に言うと可動域が狭く、決勝では並ばれてから対処できなかった。
やはり棄権するしかなかった400mでの勝負を見たかったな。
しかしマクワラは間違いなく今大会の主役の1人になった。経緯もさることながら、キャラクターもあるだろう。
そしてサニブラウン選手。
正直決勝は厳しいと思っていたが準決勝の走りは素晴らしかった。
特にコーナーの頂点に差し掛かるところから通過するまでが滑らかで、自身の走力を最大限に引き出すような素晴らしいコーナリングだった。
直線ではそんな加速を得た上で、規格外の出力を一歩一歩に乗せていくわけだから海外の強豪もそう簡単に捉えることはできない。
そしてその能力に見合うファイナリストという地位を18歳にして手に入れた。
決勝は脚に不安があり、直線で勝負できなかったがコーナーであそこまで戦えたのなら今後に十分期待できる。
誰も想像つかないような、本当にとんでもない選手になるだろうな。
ヤングはリズムが乱れると、とことん崩れてしまうのかその走力とは裏腹にいいところなく終わってしまった。
準決勝も1着通過しながら余裕はなかったが。
なお飯塚選手は準決勝で5着に終わったが、過去に出場した世界大会の個人種目の中では最も健闘したのではないかと思う。
競り勝ったシンビンやドワイヤーも途中で諦めたり、力を抜いたレースではなかったように見えるので、そんな中で5着は見事。
好調時のキレはないものの、冷静にレースを捉えて失速を最大限に抑えられた経験は大きいのではないだろか。
〜了〜