Rioオリンピック 7
なんとなんと400mリレーで日本チームが銀メダルを獲得しました。
大会前は想像も出来ませんでしたが、やってくれましたね。
というわけで日本チームを中心に男子4継ネタです。
男子400mリレー決勝
※カッコ内の記録はメンバーの今季ベスト合計。
(ブラジルのバロスとビデスは今季の記録不明のため自己ベストで計算)
1.ジャマイカ(パウエル-ブレイクーアシュミード-ボルト 39.60) 37.27
2.日本(山縣-飯塚-桐生-ケンブリッジ 40.52) 37.60
3.カナダ(へインズ-ブラウン-ロドニー-デグラス 40.31) 37.64
4.中国(Tang-謝-蘇-張 40.70) 37.90
5.イギリス(キルティ-アリエッティ-エリントン-ジェミリ 40.32) 37.98
6.ブラジル(デ・ソウザ-ドス・サントス-デ・バロス-ビデス 40.76) 38.41
アメリカ(ロジャース-ガトリンーゲイ-ブロメル 39.58) DQ
トリニダード・トバゴ(ブレッドマン-ソリロ-カレンダー-トンプソン 40.22) DQ
こうして見ると今季ベストの合計は6番目。
飯塚選手は10.1台か2台前半で走れると思うので実際は結果の通りカナダ、イギリス、トバゴらと競り合うだけの走力は元々あったといえる。
まぁそんな想定をしてしまうと他国も同じことが言えるだろうからあまり意味がないが。
いずれにせよそこを勝ち上がっての銀メダルというのが凄いな。
1走
山縣選手はパウエルやロジャースのすぐ外側でプレッシャーがきついかもしれないと思ったが予選に引き続き自身の走りができた。というより負けていなかった。
パウエルやロジャースがコーナーをそれ程得意としていないこともあるだろうが、リレーの1走を想定しての練習をあまりしていないのではないかと思われる。
山縣選手は1走としてのクオリティが高く、加えて今大会で波に乗っていることを考えれば妥当といえるが、本当に大舞台で力を発揮できる能力に秀でおり素晴らしい流れを作った。
2走
飯塚選手はエース区間ということもあり追い込まれはしたが、しっかりと加速に乗った素晴らしい走りだった。
練習の段階で「力まない」ための取り組みを強く意識していることが今月の月陸に書かれてあったが、このレースにおいてはそれが上手く生きたのでは?
また伊東氏が言っていたように山縣選手からのバトンが遠く、一瞬間に合わないのではないかとヒヤッとしたが、実に上手く微調整して間に合わせた。
推進力に極力影響が出ないよう重心を固定させながらも微妙に態勢をシフトさせて受け取ったように見えるが、日本のバトンが上手いというならこういう局面を処理できる技術も評価されるべきかもしれない。
ガトリン、ブレイクはさずがの走力だが疲労からかキレに欠け、いずれも明確な優位を作ることは出来なかった。
3走
桐生選手は走順関係なくこのレース全員の中でボルトとディグラスに次ぐ走りだったのではないか、と思う位に素晴らしかった。
バトンワークにおいて減速が最も少なくスムーズに加速をして走り抜けることが出来たこともあると思うが、純粋に走力においてもゲイ、アシュミードに勝っていたのではないか。
少なくともこの3走の勝負においては。
力んでいるようにも見えるが、接地局面で大きな力を加えながらも動き自体は柔軟性があり、直線レースに近い推進力があった。
それだけコーナーワークが素晴らしかったということだと思うが、結果的に桐生選手の有り余るパワーをコーナーが上手く緩和した、なんてこともあるだろうか。
4走
素晴らしい位置でバトンをもらったケンブリッジ選手。
だがボルト、ブロメルと並走しディグラスに追い上げられる位置で自身の走りが出来るのだろうかと一瞬頭をよぎった。
実際にボルトに大きく離されディグラスには猛烈に追い込まれたがよく粘り、怪我をしていたとはいえブロメルには競り勝って2着を確保した。
本人はあまり覚えていないと言っていたが、動きは正確で乱れなかった。
何故か一瞬だけ僅かに動きが遮断される間があったがおそらくその時にボルトとバトンがぶつかったのではないかとおもわれる。
それでも流れが途絶えなかったのは走力の証。
上体も強く、力を逃さなかった。
ブロメルも相当厳しい状態の中よく走りきったと思うが、それだけにより一層失格はきついな。
素晴らしい追い上げをみせたディグラス擁するカナダも何気に自国新。
あのアトランタ五輪優勝時の記録を超えたんだな。
あの時のアンカーのベイリーは最後流していたが。
また中国は張が本調子でない中、イギリスは1レーンということと、3〜4走間でバトンミスがありながらもジェミリの粘りもあって結果的にはなかなかの好記録となった。
日本のバトンワークについて。
メディアで多く取り上げているように、アンダーハンドの進化系が今回のメダル獲得に大きく影響したことは間違いないのだろう。
他国以上にロスのないスムーズな加速ができていたことからも明らかである。
だが今回の快挙は個々の走力の向上が何より大きいのではないか。
北京五輪のメンバーは日本陸上史に残る名スプリンターたちであり最大限の力を発揮したが、当時がピークで絶好調だったのは塚原選手くらい。
今回のメンバーは全員がそれぞれのこれまでのキャリアの中で今がピークであり、層の厚さでも上回った。
そういった走力を長年にわたり継承・進化されてきたアンダーハンドの技術が支えたということではないだろうか。
時代は変わるので今後さらなる進化を目指す過程でオーバーに戻すことがあってもいいと思う。
そして何よりこれを機に個人でも素晴らしい結果をだしてくれることを期待したい。
今回の結果で9秒台の価値はいい意味で下がったのではないかと思う。
ボルトについて
これで3大会連続3冠というとんでもない偉業を達成(カーターのドーピングで北京とロンドンのリレーは剥奪される可能性あり)。
その数字もさることながら、このレースがその偉大さを象徴するようで見応えがあった。
バトンを受けた時の位置は日本、アメリカと遜色なくジャマイカ自身もバトンがスムーズではなかったため出遅れたが、実質残り85m位で2位以下に0.3秒以上もの大差をつけた。
誰がどの位置でこようが非情にも一気に叩き潰す。
最後に改めてボルトの芯にある怪物ぶりを見せてもらい、見る側としても満足した。
~続く~