陸上競技 男子短距離〜観戦記〜

主に男子短距離の観戦記&雑感などを勝手に書いているブログです

Rioオリンピック 8

女子短距離とその他のネタをざっくりと。

 

W100m決勝+0.5m

トンプソン 10.71

ボウイ 10.83

フレーザー 10.86

タルー10.86

シパーズ 10.90

アイエ 10.92

ガードナー 10.94

ウィリアムズ 11.80

 

前評判通りトンプソンの圧勝。

一歩一歩の踏み込みが鋭角的で、大きな推進力を生んでいるように見える。

 

踏み込みが鋭すぎて過ぎて上手く回転しないのではないかと思ってしまうが、腰を軸とした前傾ぎみなポジショニングで柔軟に力を吸収し、次のエネルギー放出へつなげているのではないか。

 

更にスタートから抜け出せるだけでなく、強靭なフィジカルでもってして中間あたりまで加速動作を続けられるのも強さの秘訣か。

顔が起き上がった段階でリードしていれば誰も勝てないのでは。

 

そんな中ボウイはよく追い上げたな。

しかもスタート直後、僅かにバランスを崩したようにも見える。

フレーザーとタルーを一気に逆転した回転力は凄いが、トンプソンまでは遠すぎた。

 

フレーザーは三連覇ならず。

スタートでトンプソンの前に出られなかったことで勝負はあった。

またゴール手前で前傾になり過ぎる悪い癖が出てしまったのがボウイにも負けた要因か。

しかしシーズン序盤の状態を考えればよくここまで盛り返したと思う。

また3大会連続のメダル獲得も偉業に違いない。

同じようにスタートから飛び出せるタルーに同タイムながら勝利したその差は僅かながらも大きなものだろう。

 

 

 

200m決勝-0.1m

トンプソン 21.78

シパーズ 21.88

ボウイ 22.15

タルー 22.21

アッシャー・スミス 22.31

アイエ 22.34

スティーブンス 22.65

ラロワ 22.69

 

こちらもトンプソンの圧勝で二冠達成。

100mに比べると少し荒くも見えたが、元々200mが強いことを考えると直線に出てきた段階で勝利はほぼ確実だった。

 

それにしても2年前まで無名の選手が一気にここまで駆け上がるんだからジャマイカは本当に層が厚い。

 

シパーズは全体的に微妙に動きが噛み合っていなかったのではないか。

前半で離され過ぎたようにスピードの差があった。

しかし100m決勝の2人の差を考えればよく追い上げたと思うし、記録もなかなかのもの。

準決勝で先着したことが悪い方向に影響したかもしれないな。

 

ボウイは100mに続いて出遅れたが、同じように猛烈に追い上げてメダル獲得。

前半はもったいないが、加速に乗るとやはり迫力がある。

そしてアメリカの面目を保ったか。

 

タルーは100m、200m共に4位で僅かにメダルに届かず。

しかしこの選手がいたかいなかったかでは展開が異なったのではないかという位にレースに噛み付いたと思う。

 

 

400m決勝

ミラー 49.44

フェリックス 49.51

ジャクソン 49.85

ヘイスティングス 50.34

フランシス 50.41

マクファーソン 50.97

ゼムリャク51.24

グレノット 51.25

 

フェリックスは上手くレースを構築したと思うが、序盤でスピードに乗り切れなかった印象は受ける。というより、そこまでスピード自体が戻らなかったということか。

しかし脚の回転は相変わらず美しく、シーズンベストを出すのはさすが。

出来ることは全て出し切ったのでは。

 

そんなフェリックスに勝ったミラー。

スプリンターとしての厚みで言えばフェリックスにはまだ及ばないと思うが、やはり身体能力が高い。

 

長身でいながら要所要所で動きを自身のスピード感、距離感の中で上手くまとめていて、抜群のタイミングで勝利を決めたスライディングゴールにも天性のセンスを感じる。

 

戦略としてはどうかと思うが、あれだけ目一杯の状況で活路を見出し、それを勝ち取る嗅覚が素晴らしい。

今後は是非とも48秒台を狙って欲しいところ。

 

 

 

 その他雑感。

 

勝手にMVPを決めるなら男子はファン・ニーケルク、女子はアヤナの世界新コンビか。

 

注目度、歴史的な快挙で言えばボルトかもしれないが今大会のパフォーマンスで言えば上記2人ではないか。

 

信じられない光景が一気に訪れてしまい、未だに整理がついていない。

 

他にはクレメントや、バルトレッタの勝利は感慨深いものがあった。

 

あえて感動したなんてなことをいうなら男子走高跳びのドロウインか。

最初の跳躍から王者の貫禄を漂わせ、最後までその威光を保ち魅せてくれた。

 

 

日本勢のMVPを選ぶなら男子は山縣選手、女子は上原選手。

 

男子は 荒井選手や澤野選手とするべきかもしれないが、リレーの快挙の1番の立役者であることを考えてのもの。

 

リレーの1番の立役者というのは、あくまで一つの見方において。

 

今回の快挙は全員が適材適所で力を出し切ったことによるものだが、例えば北京五輪銅メダル獲得時に末續選手がアンカーを務めてもメダルは取れたかもしれないが、朝原氏が2走ならそれは叶わなかったのではないか、といった勝手な推測と同様のもの。

 

今回もあえて決めるならその選手がそこにいることが最も大きな軸になったのではないか、というあくまで仮説。

 

仮説なら荒井選手や澤野選手でもいいのだが、ハイレベルだった個人100mにおける結果も加味して山縣選手というこたとで。

個人種目だけならもちろん荒川選手だな。

 

 

 

 

〜了〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Rioオリンピック 7

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なんとなんと400mリレーで日本チームが銀メダルを獲得しました。

大会前は想像も出来ませんでしたが、やってくれましたね。

 

というわけで日本チームを中心に男子4継ネタです。

 

 

男子400mリレー決勝

※カッコ内の記録はメンバーの今季ベスト合計。

 (ブラジルのバロスとビデスは今季の記録不明のため自己ベストで計算)

 

1.ジャマイカ(パウエル-ブレイクーアシュミード-ボルト 39.60) 37.27

2.日本(山縣-飯塚-桐生-ケンブリッジ 40.52) 37.60

3.カナダ(へインズ-ブラウン-ロドニー-デグラス 40.31) 37.64

4.中国(Tang-謝-蘇-張 40.70) 37.90

5.イギリス(キルティ-アリエッティ-エリントン-ジェミリ 40.32) 37.98

6.ブラジル(デ・ソウザ-ドス・サントス-デ・バロス-ビデス 40.76) 38.41

 アメリカ(ロジャース-ガトリンーゲイ-ブロメル 39.58) DQ

 トリニダード・トバゴ(ブレッドマン-ソリロ-カレンダー-トンプソン 40.22) DQ

 

こうして見ると今季ベストの合計は6番目。

飯塚選手は10.1台か2台前半で走れると思うので実際は結果の通りカナダ、イギリス、トバゴらと競り合うだけの走力は元々あったといえる。

まぁそんな想定をしてしまうと他国も同じことが言えるだろうからあまり意味がないが。

 

いずれにせよそこを勝ち上がっての銀メダルというのが凄いな。

 

 

1走

山縣選手はパウエルやロジャースのすぐ外側でプレッシャーがきついかもしれないと思ったが予選に引き続き自身の走りができた。というより負けていなかった。

 

パウエルやロジャースがコーナーをそれ程得意としていないこともあるだろうが、リレーの1走を想定しての練習をあまりしていないのではないかと思われる。

山縣選手は1走としてのクオリティが高く、加えて今大会で波に乗っていることを考えれば妥当といえるが、本当に大舞台で力を発揮できる能力に秀でおり素晴らしい流れを作った。

 

 

2走

飯塚選手はエース区間ということもあり追い込まれはしたが、しっかりと加速に乗った素晴らしい走りだった。

練習の段階で「力まない」ための取り組みを強く意識していることが今月の月陸に書かれてあったが、このレースにおいてはそれが上手く生きたのでは?

また伊東氏が言っていたように山縣選手からのバトンが遠く、一瞬間に合わないのではないかとヒヤッとしたが、実に上手く微調整して間に合わせた。

推進力に極力影響が出ないよう重心を固定させながらも微妙に態勢をシフトさせて受け取ったように見えるが、日本のバトンが上手いというならこういう局面を処理できる技術も評価されるべきかもしれない。

 

ガトリン、ブレイクはさずがの走力だが疲労からかキレに欠け、いずれも明確な優位を作ることは出来なかった。

 

3走

桐生選手は走順関係なくこのレース全員の中でボルトとディグラスに次ぐ走りだったのではないか、と思う位に素晴らしかった。

 

バトンワークにおいて減速が最も少なくスムーズに加速をして走り抜けることが出来たこともあると思うが、純粋に走力においてもゲイ、アシュミードに勝っていたのではないか。

少なくともこの3走の勝負においては。

 

力んでいるようにも見えるが、接地局面で大きな力を加えながらも動き自体は柔軟性があり、直線レースに近い推進力があった。

それだけコーナーワークが素晴らしかったということだと思うが、結果的に桐生選手の有り余るパワーをコーナーが上手く緩和した、なんてこともあるだろうか。

 

 

4走

素晴らしい位置でバトンをもらったケンブリッジ選手。

だがボルト、ブロメルと並走しディグラスに追い上げられる位置で自身の走りが出来るのだろうかと一瞬頭をよぎった。

 

実際にボルトに大きく離されディグラスには猛烈に追い込まれたがよく粘り、怪我をしていたとはいえブロメルには競り勝って2着を確保した。

 

本人はあまり覚えていないと言っていたが、動きは正確で乱れなかった。

何故か一瞬だけ僅かに動きが遮断される間があったがおそらくその時にボルトとバトンがぶつかったのではないかとおもわれる。

それでも流れが途絶えなかったのは走力の証。

上体も強く、力を逃さなかった。

 

ブロメルも相当厳しい状態の中よく走りきったと思うが、それだけにより一層失格はきついな。

 

素晴らしい追い上げをみせたディグラス擁するカナダも何気に自国新。

あのアトランタ五輪優勝時の記録を超えたんだな。

あの時のアンカーのベイリーは最後流していたが。

 

また中国は張が本調子でない中、イギリスは1レーンということと、3〜4走間でバトンミスがありながらもジェミリの粘りもあって結果的にはなかなかの好記録となった。

 

 

 

日本のバトンワークについて。

メディアで多く取り上げているように、アンダーハンドの進化系が今回のメダル獲得に大きく影響したことは間違いないのだろう。

他国以上にロスのないスムーズな加速ができていたことからも明らかである。

だが今回の快挙は個々の走力の向上が何より大きいのではないか。

 

北京五輪のメンバーは日本陸上史に残る名スプリンターたちであり最大限の力を発揮したが、当時がピークで絶好調だったのは塚原選手くらい。

今回のメンバーは全員がそれぞれのこれまでのキャリアの中で今がピークであり、層の厚さでも上回った。

 

そういった走力を長年にわたり継承・進化されてきたアンダーハンドの技術が支えたということではないだろうか。

 

時代は変わるので今後さらなる進化を目指す過程でオーバーに戻すことがあってもいいと思う。

そして何よりこれを機に個人でも素晴らしい結果をだしてくれることを期待したい。

今回の結果で9秒台の価値はいい意味で下がったのではないかと思う。

 

 

ボルトについて

これで3大会連続3冠というとんでもない偉業を達成(カーターのドーピングで北京とロンドンのリレーは剥奪される可能性あり)。

その数字もさることながら、このレースがその偉大さを象徴するようで見応えがあった。

 

バトンを受けた時の位置は日本、アメリカと遜色なくジャマイカ自身もバトンがスムーズではなかったため出遅れたが、実質残り85m位で2位以下に0.3秒以上もの大差をつけた。

 

誰がどの位置でこようが非情にも一気に叩き潰す。

最後に改めてボルトの芯にある怪物ぶりを見せてもらい、見る側としても満足した。

 

 

 

 

~続く~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Rioオリンピック 6

400mリレーで日本チームやりましたね。

 

正直落選もあり得ると思っていたこともあって余計に驚きました。

 

山縣選手の1走、桐生選手の3走という戦略が柱となり、見事にハマってますね。

決勝が楽しみです。

 

さて、本日行われた男子200mについてです。

 

男子200m決勝-0.5m

ボルト 19.78

ディグラス 20.02

ルメートル 20.12

ジェミリ 20.12

マルティナ 20.13

メリット 20.19

エドワード 20.23

グリエフ 20.43

 

ボルトは宣言していた通り記録を狙いにいったが、自身の世界大会優勝記録としては最も悪いタイムに終わった。

 

スタートから攻めていたが、伊東氏も言っていたようにコーナー出口でやや外に振られてしまった。

その手前で直線に向かう軌道(内側に向かう軌道)がやや早めに訪れてしまい、微妙な調整をした結果、膨れてしまったようにも見える。

 

それだけ前半から力を入れていたのだと思うが、うまくスピードに乗り切れず後半は苦しかったのか上体の力みも感じた。

 

全盛期の動きやスピード感と実際の感覚にズレを感じたのではないか。

後続をもっと突き離しているはずなのに思いのほか離れていない、といったように。

衰えなのか疲れなのか、はたまた怪我による準備不足だったのか。

 

しかし、それらはあくまで世界記録を狙うという観点からの見方であり、レース自体は見事なものだった。

 

全盛期ほどではないにせよ、世界大会の決勝で見せる走りはいつも以上にダイナミックながらしなやかであり唯一無二、異次元の迫力を感じる。

また力みながらも接地自体は正確だったように見えるし、地力だけで勝ったわけではない。

 

これで2種目3連覇の偉大すぎる記録を達成。

そしてこのレースも含め、全てのレースでその時の全てのトップアスリートを圧倒して勝っているということがグレーテストの証。

 

 それにしても本当にスーパースターだな。

トラックを引き上げる際に、最後に自分の走った6レーンゴール付近で跪き、トラックにキス。

神に祈って立ち上がってからのライトニングボルトポーズ。

 こんな痺れる振る舞いがさまになる男は他にいない。

 

 

ディグラスは100mに続きメダル獲得。

想像以上にボルトに出られてやや硬くなったようにも見えた。

ボルトが外側だったことから大きな壁に前へ出る力を抑えられたような気分だったかもしれない。

 

しかしスピードの差で3位以下の選手に差をつけた。

まだキャリアが4年程度とのことかだが、そのような荒さは全く感じない。

もちろん課題は多々あるだろうから今後どのように洗練されていくか楽しみだ。

 

3位争いは熾烈なものとなったがルメートルがテグ世界陸上以来5年ぶりのメダル獲得。

 

前半は少し出遅れ、おそらく100mの通過は7番目だったのではないだろうか。

だが、どんどん離されるというよりかは差を一定に保ち出遅れを最小限に抑えた印象。

メダル射程圏の差で直線を迎えるとあとは大きな走りで力を出し切った。

僅差の中メダルを獲得できたのはやはりフィジカルの差か。またその部分を最大限に発揮する落ち着いた走りができた。

フィニッシュもピッタリと200mで力を使い果たした時に訪れたかのごとく見事だった。

 

ジェミリもメダルは逃したが大健闘。

2レーンとは思えぬ見事なコーナーワークで駆け抜け、直線でもいい位置につけた。

そこからは上体の強さで身体が浮かないようにスムースに進んだ。接地の際に頷くように首が前へ動くが、ロスでははなく逆に微妙なバランスとタイミングを取っているように見える。

ただ、最後10mあたりで僅かにその間合いがずれたようにも見え、ほんの僅かな差でメダルを逃したか。

 

なんと厳しい戦い。

改めてメダル獲得がいかに偉大なのかと思わされる。

 

 

マルティナは決勝でも素晴らしい走り。

もう謝るしかないな(何をだ)。

 

多少力んだと思うが準決勝同様にロスのないタイミングで走り抜けた。

ルメートルとジェミリに劣ったのは現時点の走力の差か。

逆に言えばそれでここまでの戦績を残すのだから本当に200mのスペシャリストだな。

今更だが北京での幻のメダルが悔やまれる。

が、あれがあったからここまで円熟味のあるスプリンターになったのかもしれない。

 

メリットはコーナー自体は良かったが、ショートスプリンターのスピードに圧倒されてしまった。

直線では準決勝までのようなキレはなく、動きが噛み合っていなかった。

ディグラスとボルトに挟まれたことが悪く影響したか。またスタートで遅れたことも響いたかもしれない。

 

 

エドワードは前半まで悪くない位置にいたが、走力の差で抑え込まれいつものように後半出てこれなかった。

 

雨、風の影響もあってか世界大会の決勝としては記録がやや低調だったようにも見えるが、今季多くのトップクラスの大会において安定感のあったエドワードが下位に沈んでしまうんだからこのレースのレベルの高さが分かる。

 

グリエフは体も動きも大きいだけに1レーンはきつかったか。

準決勝でジェミリに僅差で負けた時点で明暗を分けた。

いや、2レーンもきつかったか。

しかしよくここまで勝ち上がった。

 

以上

 

大会もあと僅かですね。

 

時間があれば久々に女子短距離ネタも書こうと思います。

 

 

〜続く〜

 

 

 

 

 

Rioオリンピック 5

男子200m準決勝

 

1組-0.4m

メリット 19.94 Q

ルメートル 20.01 Q

タルボット 20.25

アシュミード 20.31

ソリロ 20.33

ブレネス 20.33

ブラウン 20.37

エレラ 20.48

 

メリットはこのラウンドでも楽勝。

予選同様直線のほとんどでスクリーンを見る余裕があった。

 

スタートはややコンパクトに脚を置いて出力を一気に上げているのだろうか。

ロングの選手ながらスピードにのるのが早く、そしてその維持力が凄い。

決勝で100mのトップ選手達とどんな争いを見せるのか非常に興味深い。

 

ルメートルは久々に持ち味を発揮した。

全盛期のスピードはなく前半はやや遅れたが、8レーンだったことも良かったのかそれほど放されることはなかった。

そして直線ではフィジカルの強さを生かしたしなやかな動きを見せた。

 

まだ上半身との連動がうまくとれていないようにも見えるので、決勝でも自分の走りに集中できればさらに記録を伸ばすかもしれない。

 

タルボットは予選より見事なコーナーワークを見せ大健闘したが届かず。

しかしこのメンバーで一つ抜け出た上で3着に入れたことは自信になるのでは。

 

アシュミードはコーナーから攻めたがいいリズムを作れなかった印象。

100mを経て、200mの予選までで力尽きてしまったのかもしれない。

 

 

2組-0.3m

ボルト 19.78 Q

ディグラス 19.80 Q

ジェミリ 20.08 q

グリエフ 20.09 q

ヤクーブ 20.43

ウェブ 20.43

オドゥドゥル 20.59

スカイヤーズ 20.60

 

ボルトはスタートから力を入れていた。MAXではないが全力を想定した走りというのか。

 

前半で抜け出せれば後は100mのラウンド通過と同様に身体をゴールまで運ぶだけ。

ディグラスが迫ってきたので接地局面ではしっかりと身体を乗せていったが、リラックスしながらそれが出来るのが強みか。

決勝でギアをあげれば19.5を切るかもしれないが、無難に19.6台位で走るパターンもありそうだ。

最後の五輪になるだけに久しぶり(?)にこの種目を全力で走るところを見てみたいが。

 

 

自己ベストをマークしたディグラスも自信にあふれた素晴らしい走り。

100mの安定した動きやリズムを200mにも持込めるんだから強いわけだ。

この選手を走力だけで圧倒できない場合や競った時に崩すのは相当難しいだろうな。

 

ジェミリとグリエフはプラスで通過。

グリエフが追い抜きそうだなと思ったがジェミリがわずかに先着。

 

残り50mはグリエフの方が伸びがある走りにみえるが動きが大きい分だけ体が僅かにブレた、あるいは浮いてしまったのに対してジェミリはしっかり地面を捉えていた、そんな印象を受ける。

どちらにしても2人ともレベルの高い勝ちあがり方。

 

 

 

3組-0.2m

エドワード 20.07 Q

マルティナ 20.10 Q

ガトリン 20.13

オルテラーノ20.16

ミッチェル-ブレイク 20.25

ブレイク 20.37

ツァコナス 20.63

ガルバン 20.88

 

エドワードのコーナリングは最も美しい曲線を描いたのではないかと思う位になめらかだった。

今季DL等で安定して上位で走れていることも自信になっていたのではないだろうか。

前半で上位グループを射程圏に捉えられていれば決勝でメダルもあるかもしれない。

 

 

そして、なんとマルティナが決勝進出。

正直全く予想できなかった。

優しい目で見守り過ぎたな。

 

コーナーは持ち前のやや強引なテンポアップでうまく走り抜け、直線に出てきた段階でまずまずの位置につけた。

 

最後はピッチが落ちた様にも見えるが推進力は劣らずスルスルと2位まで上がってきた。

うまく自分のペース、リズムにハマったのだと思うがまぐれではないだろう。

ラスト20〜30mでは接地時に必要なタイミングにだけ力が入り、無駄な間がなかったと思われる。

一見強引な走りに見えるが速度と動きの帳尻が合った時に素晴らしいバランスを生み出すとでもいうのか。

そしてそれを最高の舞台で発揮するベテランらしい調整力があった。

ちなみに8レーンの選手全員が決勝に進んだのはかなり稀なケースではないだろうか。

 

ガトリンは予選落ち。

やはり動きが硬く、余裕がなかった。

最後もう少ししっかり走っていれば通過していたかかもしれないが、決勝で戦うのは難しかっただろうな。

たぶん今大会で相当消耗しているのではないかと思われる。

 

ブレイクも落選。

こちらは200mを走る準備が出来ていなかった。

出力自体は100mの結果からも分かるように十分戦えるところまで復帰できているが、それを200mの流れに組み込むことが出来ていなかったのではないか。

 

落選したがオルテラーノは健闘した。

今後期待できそうな選手だ。

 

 

〜続く〜

 

 

 

 

 

 

 

 

Rioオリンピック 4

200m予選の感想をざっくりと。

 

1組+0.7m

エドワード 20.19 Q

タルボット 20.27 Q

ツァコナス 20.31 q

オグノデ 20.36

 

エドワードは好調を維持。

19秒台が出るかどうか、といったところか。

 

コーナーをしっかりと走れたタルボットがそのまま流れ乗って着順で通過。

インレーンからにもかかわらず見事な走りだった。

 

後半強いツァコナスはプラスで拾われたが昨年ほどのキレはないように見える。

 

オグノデは100mに続き落選。

どうも身体が重く、動けていないように思う。

怪我をしているのか、あるいはその影響で仕上げ切れていないのかもしれない。

 

 

2組-0.2m

オルテランド 20.12 Q

ブレイク 20.13 Q

ウェブ 20.31 q

ジョボドゥワナ 20.53

 

今季20.18をマークしてるオルテランドが勢いをこの舞台まで持ってきた。

こちらもタルボット同様にコーナーでしっかりとレース構成の地盤を築けていたのが勝因か。

 

反対にウェブはもう少しコーナーを攻めるべきだったか。直線でも好調時のような推進力に欠けた。

通過はしたもののあまりいい感触は掴めていないと思われるので、準決勝で突っ込みすぎなければいいが。

 

ブレイクは余裕を持って通過したが、やはり200m仕様までは仕上げられなかったようにも見える。

次のラウンドでハッキリすると思うが。

 

そして今季の動向が分からなかったジョボドゥワナは予選敗退。やはり怪我をしていたのか。

 

 

3組+0.3m

ヤクーブ 20.19 Q

グリエフ 20.23 Q

ブラウン 20.23 q

飯塚 20.49

 

日本歴代2位まで記録を上げていた飯塚選手は落選。

 

直線では大きく遅れながらもよく動きを制御出来ていた方だと思うが、いかんせん前半で離されすぎた。

走力、バネの強さ等々体の強さがそのままレースに反映されだだろうか。

やはり前半で最低でもトップを捉える射程圏にいないと厳しい。

末續選手や伊東氏にはその走力があった。

 

しかし決して悪い結果ではないのでリレーではいい走りを見せてくれると思う。

 

 

4組±0m

エレラ 20.29 Q

スカイヤーズ 20.44 Q

フランシ DNS

 

比較的楽な組だったこともあると思うが、エレラはリラックスした走りで快走した。

上半身が強く、身体が浮かない強さがあるだろうか。

 

しかし三段跳にも出ていたがメキシコの選手とは珍しいな。400mのカルデナスを思い出す。

 

また期待していたフランシスは棄権。

ボルトを脅かすことが僅かでもあるとすればこの選手かもしれないと思っていただけに残念だ。

 

 

 

5組-1.5m

ガトリン 20.42 Q

ガルバン20.58 Q

6.藤光 20.86

 

ガトリンはパワーの差を見せつけたが、見た目ほど余裕はない様にも見える。

体力的な問題も気になるところ。

 

藤光選手は間に合わなかった様子。

20秒台で走り切るだけでもよく合わせてきた方なのかもしれない。

 

6組+0.4m

アシュミード 20.15 Q

ジェミリ 20.20 Q

 

アシュミードは100mの悔しさをぶつけるかのようにしっかりと走った。

ジェミリにトップを譲らない緊張感もあり、良かったと思う。

 

しかし動きはジェミリの方が切れていたか。

やはり怪我する前よりも走りがシャープになったような気がする。

 

 

7組+-m

ブレネス 20.20 Q

マルティナ 20.29 Q

ロドニー 20.34

 

400mのイメージが強いブレネスだが、ショート専門の選手らを圧倒した。

本職の方で決勝に進めなかったことが不思議な位だが、それだけロングの方も全体的にスピード化してきたということか。

また最短距離をスムーズに走るコーナリングも見事だった。

 

マルティナもなんとか通過。

正直好きなタイプの走りではないのだが、毎回応援してしまうんだな。

最後の直線でロドニーに負けたかと思ったが、持ち味の粘りは健在でベテランらしいいいはしりだった。

準決は厳しいだろうけども。

 

 

 

8組+0.4m

メリット 20.15 Q

ルメートル 20.28 Q

 

メリットは400mの疲労が心配だがとりあえずこの段階では問題なかった。

ややコーナーで膨らんだ気もするが、スタートから動きはキレていた。

やはりメダル候補の一角だろう。

 

ルメートルは2レーンがきつかったか直線で波にのるまでにロスがあった。

ただアウトレーンだったとしてもメリットには前半から離されていたのではないかと思う。

 

 

9組+0.6m

ボルト 20.28 Q

オドゥドゥル 20.34 Q

6.高瀬 20.71

 

ボルトはかなり流していたが序盤はまずまず力を入れていた様に見え、今季ほとんどレースに出ていない200mの感触を確認していたのではないか。

そして問題はなさそうだ。

 

高瀬選手は日本選手の中で最もスピードがあるだけに1番戦えるかもしれないと思っていたが、厳しい戦いとなった。

実際に前半は良かったが、150mあたりまでしかもたなかった。

インレーンがきつかったか、そこで余分な力が入ってしまい最後まで動きを維持できなかったか。

 

10組+1.0m

ディグラス 20.09 Q

ミッチェル・ブレイク 20. 24 Q

ソリロ 20.27 q

 

ディグラスは最高タイムで通過。

昨年の世界陸上も100mに絞るなら200mに絞った方がいいのではないかと思っていたが(100mにして正解だったのだが)、やはりこの種目も強い。

100mの内容から考えても現時点ではガトリンより上かもしれない。

 

ソリロは100m同様に油断して最後抜かれた様に見えたが無事にプラスで拾われた。

 

 

 

〜続く〜 

 

Rioオリンピック 3

M400m決勝

ファン・ニーケルク 43.03

ジェームス 43.76

メリット 43.85

セデニオ 44.01

シバンダ 44.25

ハミス 44.36

タプリン 44.45

ハドソンースミス 44.61

 

とんでもない記録が誕生した。

 結果的に良かったという見方もあるかもしれないが、8レーンに入った時はやはり心配した。

しかし相当自信があったのだろう。

勝つ自信だけに留まらず、世界新を更新出来るという自信が。

 

自分のレースに集中していたというよりも、自分のレースに集中できるだけの大きな実力差があった。

 

とにかく動きが変わらない、落ちない。

もちろん実際は減速しているし後半は鈍ってきているのだが、芯の部分はどれだけ飛ばしてもぶれることはない。

 

上手く表現できないが、みぞおちあたりを体の中心と見立てるならば、ファン・ニーケルクの全ての動きはその中心を軸に美しく乱れのない円を描くように回転しているとでもいうのか。

その回転がハイスピードでありながらもリズムが崩れることなく、最初から最後まで持続されるため誰もついていけない。

 

正式なラップかどうかわからないが、各区間の通過タイムは以下の通りなのだとか。

100m 10.7

200m 20.5

300m 31.0

 

ジェームスもメリットもあまりのハイペースに200m付近で「???」となったのでは。

あるいは絶対に落ちてくるはずだと思ったのではないか。

しかし落ちなかった。

また2人共あまりのハイペースに惑わされ、自身のペースが乱れたように見える。

 

97年の全米だったか元世界記録保持者のレイノルズが200mの通過を20.7位で通過しながらも自滅してしまったのを思い出したが(記憶が定かでないが)、20秒台で通過するというのはどう考えても無謀としか思えない。

しかしそれを可能にするのはやはり100m9秒台の走力と、そのスピードを高いレベルで効率的な動きの中に安定させる技術がなせる業とういうことか。

 

ジェームスとメリットも好記録だったが太刀打ちできず。

どちらが2着に入ってもおかしくなかったが、序盤は滑らかな加速を見せながらもバックストレートでより迷いの生じたメリットの方がそこで無駄な力を使ってしまい、その分だけ最後の直線での減速も大きかったと言えるだろうか。

ジェームスもファン・ニーケルクに乱された面はあると思うがその中でも200m以降は動きを制御する冷静さがあったと思う。

ただ想像以上にファン・ニーケルクが最後まで落ちてこなかったということではないか。

 

セデニオも準決勝の走りが自信をつけたのか43秒台に迫る好記録。

そしてシバンダはなんと18歳!?

記録はもちろんすごいが、このレース展開の中で自身最高の走りを出来たことが素晴らしい。

 

 

それにしても放送時点からそれ以降も今回の結果に対するメディアの扱いが薄すぎるように思う。

 

ファン・ニーケルクにスター性がないからか、ボルトへの関心が高すぎるからからかは分からないが、伝説の記録を素晴らしい内容で塗り替えただけにさみしい限り。

 

しかし個人的にはよりファンになった。

ぜひともボルトとの300m対決を実現させてほしいところ。

 

 

~続く~

 

 

 

 

 

Rioオリンピック 2

M100m決勝+0.2m

ボルト 9.81

ガトリン 9.89

ディグラス 9.91

ブレイク 9.93

シンビン 9.94

メイテ 9.96

ビコ 10.04

ブロメル10.06

 

レース後、選手自身が言うように準決勝から決勝までの間隔が短すぎたのだろう。

記録は伸びず、ほとんどの選手が疲れを見せていたと思う。

 

見る側はそれはそれで見どころがあるが、走る側からしたらたまったものではないか。

  

ボルトは準決勝の走りからすれば7台前半の可能性もあるのではないかと思えたが、そんな疲れからか上体が硬く動きもやや重いように見え、明らかに予選・準決と比べると加速するまでも加速して以降もスムーズさ欠けた。

 

ただ、同様に疲れていたもののガトリンのスタートは素晴らしく、ボルトは前半リードされたことによってて動きを制御された部分もあるのではないかと思う。

一矢報いたというところか。

ただそこまでだった。

 

本来のしなやかさはなかったものの他を圧倒するには十分なスピードを序盤で構築しており、そこに一歩一歩慎重に乗っていくだけで勝利は確実だった。

 

本人も40~50mあたりでそれを確信したのではないか。

それにしてもなぜ条件も体調もベストでない中でここまで「正確に圧倒」できるのか。

 

やはりどんな条件下であれ一歩の凄さが違うのではないか。

前に振り出された脚が頂点に達した時、膝の位置が自分の体に対して誰よりも遠く、そして高い位置にありそこから振り下ろされて接地する際に発生するエネルギーは半端なものではないのであろう。

そしてそのエネルギーを逃さないだけの柔軟なバネとしなやかさがあり、今回のようなやや雑に見える走りでもしっかりとロスを最小限に抑えた処理がなされている。

ガトリンと比べても脚が流れておらず、前で捌けていることからも技術的に上回っていることが改めて証明されたのではないか。

 

ガトリンはボルトに勝つには最低でも昨年並みの調子は必要だった。

つまり9秒7台前半を狙えるくらいの調子であり、中盤までに大きく抜け出る仕上がりである。

まあ昨年と比較しても仕方ないが。

 

しかし序盤では異次元の強さを見せ、はっきりとリードを奪い、先に述べた通り見せ場は作った。

そこからもよく粘り、「最速の2番手」の座(矛盾した表現だな)を譲らなかったことはさすがである。

 

自身の走りを最大限に発揮したという意味ではディグラスが一番かもしれない。

脚の回転が高速ながらも振り下ろしから接地までがコンパクトにまとめて無駄がない。

また力を入れるタイミングの感覚もずば抜けているのではないか。

華奢なようでも総合的に見て力強いんだな。

 

ブレイクの動きは正確で最も冷静だったかもしれない。

だがやはり現時点の実力内での話であり、一つ一つの動きの完成度が高いわけではなく勝負できる位置ではなかった。

だがそれで4位は素晴らしい。よく戻ってきてくれた。

 

準決勝で競ったシンビンとメイテの順位は入れ替わった。

メイテは初の決勝と思えぬダイナミックな走りだったがゴール直前はリズムが僅かに狂ったか。

対してシンビンは最後まで自分の動き粘れた。t

 

実力は互角だと思うが違いは上体の安定感だろうか。

シンビンは地面に対して並行するようにほとんど頭が動かない。

メイテは動きも身体も大きい分僅かな状態のブレも大きく影響してしまうのか、やや後半浮いてしまったように見える。

 

ビコは準決勝に引き続き好スタートを切った。

だが、やはり並ばれたり先行されるともろい。

スタート自体力んでしまった面もあるように思うが。

 

 ブロメルは走るのさえ危うい状態だったようだがよくこのタイム、あの動きで走り切ったな。

自身の高速ピッチによるレース構成が体に染みついているということか。

 

 ボルトはこれで前人未到の3連覇を達成。

短距離でというか、フィールド種目以外では女子も含めて初めてなのか。

200mは記録も狙ってほしいところだが、安全運転するかもね。

それ勝てるとしたらそれはそれで凄い話だが。

 

 

 

~続く~