陸上競技 男子短距離〜観戦記〜

主に男子短距離の観戦記&雑感などを勝手に書いているブログです

Rioオリンピック 1

始まりましたね。

というか、既に4日目終了ですか。

 

それにしても今大会はこの時点で世界新が2つ。

しかも男子400mと女子10000mという破ることが不可能かと思われた記録において。

今日の女子3000障害でも更新されるのではないかとみていますが、記録面でも盛り上がっていますね。

 

さて、まずは男子100m。

久しぶりに予選の各組ごとに振り返りたいと思います。

 

M100m予選

1組-1.2m

K.ブラウン 10.13 Q

C.ウジャー 10.13 Q

M.ブレイシー 10.16 q

S.Ogunlewe 10.26

F.オグノデ 10.28

 

ブラウン、ウジャー共にスタートから中間までのつなぎがスムーズで他に並ぶ物もおらず、そのまま流れを殺さずに走り切れた。

 

ブレイシーはまずまずのスタートだが想像以上に抜け出せていなかったからかリズムを崩し、中間から動き切らぬままゴールを迎えてしまったように見える。

実力者オグノデはスタート直後態勢を崩し、そのまま立て直すことが出来なかった。

 

上位2人は流れをしっかり作った上で着順通過したのに対し、ブレイシーとオグノデは僅かなロスが大きな乱れにつながった。それは結果的にオリンピックのレベルの高さと厳しさを証明した1組らしいレースだったといえるのではないだろうか。

 

 

2組+0.8m

ガトリン 10.01 Q

D.ベイリー 10.20 Q

R.ソリロ 10.23 q

 

ガトリンンは昨年の世界陸上とは異なり、自身の走りのベース部分をしっかりと確認できた理想的な予選通過だったと思われる。

序盤でそこまで力を入れていなかったこともあると思うが、シャープさに欠けているのでは?とこの時点で思ったかもしれないが。

 

ベイリーは自身のリズムを崩すことなく通過したが、ソリロはいい流れを作りながらもの最後の僅かな油断で自滅した。

 

3組-0.1m

謝震業 10.08 Q

アシュミード 10.13 Q

H.タフティアン 10.17 q

コリンズ 10.18 q

 

これは驚いた。

謝は体幹、下半身が相当強いのか立ち上がりがやや早く見えるが、しっかりと腰が入っていてそのことによるロスはあまりなさそうだ。

また左右に大きくぶれるがそれによってダイナミックな動きを生み出し、軽やかながらも接地時に大きなパワーを与えているようにも見える。

中国はモスクワ世界陸上での張、北京世界陸上での蘇、そして今回の謝と毎回誰かが魅せてくれるな。

 

アシュミードはゴール手前で余裕のあるふりを見せたが結構きつかったのでは?

謝とは対照的に体が乗らず、パワーで強引に持って行ったように見えた。

 

タフティアンも身体がフィジカルの強さを生かして健闘した。

 

コリンズの動きはさすがだが、自身のスタイルとしてスタート直後にもう少し前へ出てないと厳しいか。

 

 

4組-0.5m

ディグラス 10.04 Q

ケンブリッジ 10.13 Q

蘇炳添 10.17 q

ビコ 10.19 q

マルティナ 10.22

 

正直この組に入った時点でケンブリッジ選手の通過はきついなと思ったがやってくれた。

ベストを出した今年の東日本実業団予選時のような軽快でリラックスした走りだった。

かなり自信があったのか、ゴール直前だけでなくその更に手前でも横を確認しており、余裕があった。練習で完璧な動きを何度も再現できていたのではないか。

 まさかビコ、蘇、マルティナ全員に先着するとは思わなかった。

3人の走り自体はそう悪くなかったと思うが、エンジンがかかりきっていなかったか。

といってもビコはなめていたと思うが。

 

それにしてもディグラスは強く、調整力には恐れ入る。

今季のこれまでのレースとは比べ物にならないくらいキレキレだった。

 

 

5組 +0.2m

メイテ 10.03 Q

ブロメル 10.13 Q

ルメートル 10.16 q

C.グリーン 10.20 q

 

メイテは走りが大きいが、脚の折りたたみ自体はコンパクトというのか、上体のパワーでオーバーストライドにならないよう上手くコントロールしているのではないか。

 

ブロメルはスタートの飛び出し自体は群を抜いているがやはり自身が言うように怪我の状態が悪く好調時のような回転は見られず序盤から抜けることもできなかった。

 

ルメートルも全盛期の力はないがさすが実力者。

しっかり合わせてきた。

 

6組-0.8m

ブレイク 10.11 Q

ハーベイ 10.14 Q

アルハルティ 10.22

 

ブレイクは動きにもやや緊張があったかもしれないが、自身の走りの地盤は構築できているように思う。

起き上がるまでにややロスがあったようにも見えたが、この組では大きな実力差があり問題なかった。

 

ハーベイはなんとなくディグラスに似た走りに見えるのだが、やや動きが流れてしまうか。

しかしこちらも実力面からしてこの組では問題なかった。

 

7組-0.4m

ボルト 10.07 Q

フッシャー 10.12 Q

ダサオル 10.18 q

桐生 10.23

S.ハート 10.28

トンプソン 10.29

 

常に大会前の心配は杞憂に終わるんだな、と改めて思わせた今大会のボルト初レース。

怪我の心配はなく、しっかり動いている。

30mまでを築けば後は流れだけで通過できる、そんな走りだった。

 

フィッシャーは見事なスタートを切り、その勢いを殺すことなく通過。

スタート直後に僅かながら態勢を崩したようにも見えるがパワー・回転力があるからか問題なかった。

 

桐生選手は課題のスタートでやや早くに立ち上がり過ぎてしまったか?

序盤で離されて、そのまま挽回できずに走力で劣るダサオルに追いつけず敗退。

しかし、その割には冷静でロスを最小限に抑えた走りだったと思う。

世間一般的には「予選で敗退かよ」と思われるのかもしれないが、決して桐生選手に力がないわけではなく、世界の準決勝進出ラインまたオリンピックの舞台がそれだけハイレベルだということだろう。 

 

8組-1.3m

シンビン 10.14 Q

山縣 10.20 Q

A.ブラウン 10.24

 

シンビンが好調を維持し、余裕をもって通過。

自身が勝負できることが確信となったラウンドになったのではないか。

 

そして山縣選手は抜群のスタートで見事着順通過。

伊東氏も言うように80mまでは100点だったと思う。

また結果的には1レーンというのもよかったか。

 

ブラウンはまずまず好スタートをきったが、山縣選手とは対照的に中間疾走へのつなぎが一旦中断してしまったかのようにスムーズさと、またパワーにも欠けた。

 

 

準決勝

1組+0.2m

ビコ 9.95 Q

メイテ 9.97 Q

シンビン 9.98 q

ハーベイ 10.03

アシュミード 10.05

ブレイシー 10.08

謝震業 10.11

タフティアン 10.23

 

ビコは予選と打って変わり見事な走り。

序盤で抜け出せれば敵はいないという自身の必勝パターンに持ち込めた。

とはいえ、リズムにやや乱れもありベスト時に比べると多少強引ではあったか。

それでファイナル進出をもぎ取れるんだからやはり実力者なのだが。

 

メイテとシンビンは予選の見事な走りをそのままに出力を上げて実力通りの通過。

お互いやや力んだと思うが勢いで潰せる位にノッていた。

アシュミードも上げてきたが今大会でベストな状態は作れなかったか。 

謝は予選のようなスムーズさがなく、序盤から中盤の走りをするかのように力み、焦ってしまった。

 

 

2組+0.2m

ボルト 9.86 Q

ディスラス 9.92 Q

ブロメル 10.01 q

ウジャー 10.01

山縣 10.05

コリンズ 10.12

グリーン 10.13

フィッシャー DQ

 

この時点で多くの人がボルトの優勝を確信したのでは?

久々に全盛期を思わせるようなダイナミックでしなやかな走りだった。

 

ディグラスも硬くはなったがボルトに中盤まで食らいついた時点で他を引き離しており、決勝進出を確実なものにした。

勝負どころと捉えていたのか結果的にはこの準決勝の走りが決勝への絶対的な自信につながったのではないかと思われる。

 

ウジャーは相変わらず終盤の粘りが素晴らしいが、上位二人に抑え込まれてしまったかのうようにブロメルに比べるとほんの僅かながらゴールまで動き切らなかったか。

 

山縣選手はお見事。

正直ここまで走れると思わなかった。

オリンピックの実績でいうなら飯島氏、朝原氏を超えて吉岡氏に次ぐ位置に来たのではないか。

 

中盤以降力んで大きく失速するのではないかと思っていたがむしろ冷静に走り切った。

準決勝もスタートは抜群だったが予選に比べて「突っ込み過ぎない」というのか、微妙なさじ加減でもってしてゆとりを持ち、中盤以降に備えた知性に溢れる走りだったように思う。

 

決勝進出に足りないのは何なんだろう。

パワーといわれればそれまでだが、まずは海外でのキャリアを多く積んでほしい。

というか海外でのレースをもっと見てみたい。

 

そしてコリンズ。

やはり厳しかったが予選からさらに仕上げつつ、自身の強みも垣間見せた大ベテランらしい味のあるレースだった。

 

3組±0m

ガトリン 9.94 Q

ブレイク 10.01 Q

ルメートル 10.07

蘇炳添 10.07

ブラウン 10.13

ダサオル 10.16

ケンブリッジ 10.17

ベイリー DNS

 

ガトリンは予選に続き着実でいながら圧倒的な走り。

ただやはり接地までにやや「間」を感じ、キレがないか。

 

ブレイクはガトリンと同走してやや乱れたか。

走力面で全く問題はなく、流れもしっかりできていたとは思うが。

 

落選したもののルメートルと蘇はさずが。

ルメートルはやはりフィジカルが強く、最後力を抜いたようにも見えるが一旦スピードに乗ると大きな動きと身体がゴールまで失速することなく運んでくれるというのか。

蘇のスタートも健在だった。

が、どちらも全盛期に比べしぶとさがなかった、またそういったものを支える調子ではなかったということか。

 

ケンブリッジは悪くなかったが、これまた伊東氏が言うようにガトリンに序盤から圧倒されて焦り、力んだか。

予選が出来過ぎだったようにも思える位、普通はこんなものなのだと思うが。

ただ、これからが本当に楽しみな選手。

トップクラスと空間で並べられるようになれば十分勝負できると思われる。

 

決勝はまた別に書きます。

 

 

~続く~

 

 

 

オリンピック展望 海外編

100m

ボルトは怪我の具合とスタミナが心配だが、復調してきていると想定するなら優勝候補筆頭か。
動きが噛み合えば問題無い、そしてその準備は出来ている、ロンドンDLはそんな状態だったのではないかと思われた。


対抗馬はやはりガトリン。
ただ今季の出来からすると昨年よりも勝つ可能性は低いか。
昨年並みにスタートで飛び出せていればガトリンを推すかもしれないが、そこまで序盤で優位に立てるとは思えない。

また昨年の直接対決で崩されたことを考えると勝つのはより厳しいだろうか。
ただガトリンもどうしたら勝てるかをこの1年間追求してきてる訳で、ピークも意図的にずらしているかもしれない。
まずは予選では他をこれでもかというほど圧倒するよりも、自身の走りを地盤からしっかりと構築できているかどうかを確認できるかがポイントになりそうな気がする。

他に優勝候補をあげるとしたらブレイク。
正直全盛期並みに戻すのは厳しいと思うが、動きの正確性だけで言えばやはり群を抜いているのではないか。
ボルトと並んだ時に抜け出せるのはガトリンよりもブレイクの方かもしれない。

意外と序盤で抜け出たブロメルがそのまま逃げ切り大波乱の勝利、なんてのもなくはないと思う。
それはそれで面白いが、優勝タイムが9秒7台中盤あたりになると厳しいか。

結局どの選手も決め手はないので、やはりボルトの勝利と予想。
ロンドンDLの走りから100mを推測するのも難しいが、昨年の世界陸上前に「私に勝つには9秒6台が必要」といっていた時と同じ位のレベル想定をしてるのではないかと思うので、条件次第では9秒7台前半あたりまで仕上げてくるかもしれない。

その他注目選手、メダル候補をあげるなら、ビコ、ディグラス、アシュミード、シンビン、てとこか。
抜け出そうなのはシンビン。
パウエルに好記録で勝っているだけに波にのるかもしれない。
ただ本番に強いディグラス、キャリアのあるビコもあなどれない。


200m
こちらも調整が問題なければボルトだろう。
世界記録を目指すというのはリップサービスだと思うが、ロンドンの走りから憶測するなら19秒5以内は可能だと思われる。根拠はないが一気に3台位出すような気もするのだが。

心配なのはスタミナ、そしてレースを積み重ねることでケガしないかどうか。

それにしても3大会連続で100m&200m二冠となると、なんなら自身の世界記録の価値以上のとんでもない偉業だな。

こちらも対抗馬はガトリン。
ただ昨年同様に100mより勝つのは厳しい。しいていうならアウトレーンの方が僅かでも勝つ可能性は上がるかもしれない。

メリットは結局出るのか?
この種目での世界大会のキャリアがないゆえに怖い存在ではあるが、やはりスピード差で劣るか。
また400mの両立問題もある。
それでもメダルの可能性は十分あると思うが。

ブレイクは100mを狙うのでギリギリで、200mまで仕上げるのは難しいのではないかと思う。
しかし100mで感触をつかめばわからない。ハマればやってくれるかも。

その他ウェッブ、アシュミード、エドワード、ジェミリ、ディグラスなど注目選手はいるが、一番注目しているのはミゲール・フランシス。
とんでもないことをしでかしてくれそうな可能性を秘めていると思うが果たして。



400m
やはりファン・ニーケルクが勝つのではないか。

もちろんメリット、ジェームスが勝ってもおかしくない。
特にメリットは200mで結果を出していることからも勝つための対策力を感じる。

ただ、400mの方に今のところそこまで結びついていない。また何よりファン・ニーケルクの方は100mで9秒台を出していて、全てを叩き潰せる用意周到な強さがあるんだな。

ロンドン五輪後の世界大会で勝てていないジェームスがここにきて本来の期待された能力を一気に開花する可能性もあるかもしれないが、いまひとつそれを後押しするものが見当たらない。

ではファン・ニーケルクが絶対かというとそうでもない。
世界チャンピオンとして挑む世界大会はこれが初めてであり、脆い面もあるかもしれない。

ただ、そんな脆さがあるならあんな正確な走りや動きの処理は出来ないのではないか、と思うのが優勝候補にあげる何よりもの理由。

いずれにせよこの三つ巴は他の短距離二種目に比べて勝負という意味ではより興味深い。

可能性は低いかもしれないが世界記録に近づくような昨年以上のハイレベルな争いを期待したい。

〜了〜


オリンピック展望 日本選手編

100m

記録だけ見ればまだまだ世界のトップクラスは遠いが世界大会のキャリアがないだけに未知数とも言え、96年アトランタの朝原氏のように一気に駆け上がるかもしれない。

今季絶好調の山縣選手に大一番で勝っていることと、先日の海外遠征で力を見せきらずしてまずまずの成績であったことが判断材料になるだろうか。



山縣選手

安定感でいうとこの選手だろう。
だがそれ故に想像を遥かに超えてくる可能性は低いように思う。
好調には違いないので前回大会よりやや上の実力といったところか。


桐生選手

山縣選手と対照的に今季は最も波があるが、ハマれば考えられないような結果を残す可能性が1番ある選手とも言える。
ただ海外遠征の結果、内容からすると決勝は厳しいか。


というわけで、予想するなら3選手とも準決勝5位〜6位程度の結果が出せればいいところか。

正直3人とも予選落ちする可能性もあると思う。
だが予選を1着で通過する、または大物を抑えて通過するなどいい流れが出来れば、準決勝でサプライズがあるかもしれないと期待もしている。

いずれにせよ、予選のスタートで全てが決まる。

それにしても今回のように花形のオリンピック100mで代表3人ともがここまで注目される選手で揃うというのはちょっと記憶にない。
それだけ層が厚くなってきたということか。



200m

今季絶好調の飯塚選手
スピードのある高瀬選手
キャリアのある藤光選手

ざっくりと分けてみたがこちらもタレント揃い。

しかしこの種目も予選からハイレベルな争いになる可能性が高く、3人とも準決勝に進めばいいところかもしれない。
決勝を狙うなら予選で20秒1台〜2台前半あたりを出してトップ通過する位でないと厳しいだろうか。

それは海外での3選手のアベレージを20秒3〜5台の間くらいと想定しての話なのだが、レースの流れとしてはまず予選の前半100mでトップ争いをするレース展開の流れに入れるか、あるいはそこについていけるかどうかが一つの判断材料になるだろうか。

そう考えるとやはり日本選手はスピード・パワーで劣り、厳しい戦いを想定せざるを得ない。

持てる最大限のスピードを出すことができるか、またそのスピードをコーナリングで上手く処理することができるかどうか。

どちらかというと中央のレーンに入った方がいいかもしれない。


400m

ウォルシュ選手
金丸選手

前半から飛ばしに飛ばし、後半失速して予選落ちという結果は避けたいところ。
だが、海外勢トップのレベルとキャリアを考えると予選のレース展開に対応するのはショートよりも難しいかもしれない。

スピードも勢いもあるウォルシュ選手が「あれ、意外とついていけるぞ?」となるような流れを期待したい。
また先日の海外遠征でそのあたりの感覚をつかめている可能性はあるかもしれない。

金丸選手は怪我からの復調度合いが分からないので何とも言えないがキャリアを活かしてほしいところ。



リレー
4継はメダルの期待も、なんて声も聞こえるが、
ジャマイカ
アメリカ
イギリス
トバゴ
フランス
中国
セントクリストファーネイビス
ドイツ

などなどスプリント力のある国をあげればキリがない。
正直海外勢の出来次第に左右されるだろうか。


マイルは更に厳しく、決勝は遠いだろう。
よく言われる「マイル効果」はあったとしてもそれは他国も同じ。

レース展開にもよるが記録面では最低でも日本新は必要か。
また陣営がどんなレースプランで挑んでくるかも見所。まずは一走に誰を持ってくるか。


なんにせよどちらのリレーも新しい時代を築いてほしいところ。



〜了〜

DLロンドン

だいぶ立て込んでましたが少しずつ落ち着いてきたので、オリンピックに向けてのネタなどもまた書いていきます。

200m -0.3m
ボルト19.89
エドワード20.04
ジェミリ20.07
ホルテランド20.18
ロドニー20.37
タルボット20.38
アシュミード20.51

怪我の状態が分からなかったので、調子を上げてきているエドワードと対戦するのは危険ではないかと思っていたが問題なかった。

まだ身体が乗り込み切っていないように見えたが、仕上げればシャープな動きは取り戻せそうな状態か。

どちらかというとオリンピックでは100mよりも200mの方が勝つ可能性がより高く、タイムも19.5台位までは上げてくるのではないだろうか。

それ位に200mは他を圧倒できる迫力があると改めて思ったレースだった。
不安要素があるとしたら怪我とスタミナか。


エドワードは更に調子を上げてきたがボルトに抑え込まれるように負けた印象を受ける。
ただ今のポジションも確認できただろうし、メダルも狙える位置かもしれない。
 
ジェミリも完全復活か。
こちらも100mより200mの方がより狙えそうな位置にいる。
怪我をする前よりも動きにまとまりが出てシャープになった気がするな。


100m +0.4m
ビコ10.02
ヤング10.07
マルティナ10.10
ブレイシー10.11
フォルテ10.11
ウジャー10.16
キルティ10.16
ロジャース10.19
コリンズ12.08

ビコはフィジカルが強いな。
流れに乗るとあとは身体が動きを誘導してくれるとでもいうのか、かみ合った時のスムーズさはすごい。

ただ対戦相手のレベルや状態が自分以下の場合はレースを支配できるが、競ると弱い印象は拭えない。
今年はどうか分からないが。

ブレイシーは200mのアシュミードと同様に代表権獲得後ということもあり、一度落ちた印象。
また本番までに上げてくるとは思うが。

マルティナはベテランらしく仕上げてきたのか追い込みが素晴らしかった。
ビコとは対照的に自身のポジションに関係なくレースを構築できる強さは健在の様子。
ファイナルは難しいかもしれないが。


そして心配していたコリンズは意外にもこのレースの前から早々と復帰していて、代表にも選ばれたのだとか。
厳しい状態ではあると思うが。



今大会何より素晴らしかったのはやはり女子100mHで12.20(+0.3m)の世界新を樹立したハリソンだろう。
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オリンピックで見れないのが残念でならないが、早くも目標を変更してここまで到達できたプロフェッショナルぶりが凄まじい。

石塚さんが言うように後半は少し浮き上がっていたようにも見え、タイムはまだまだ短縮できるかもしれない。

特に凄さを感じるのは抜足がハードルを越えるところから地面へ振り下ろすまでの動き。
ハードルを飛び越える際の抜足は横向きではなく縦に通過しているかのかと錯覚するほどスムーズで、振り上げから接地までの一連の動きには体制を整える等、一瞬でも流れを中断するような無駄がない。
それゆえ次のハードル動作にもゆとりができ、リズムにも乗れるということか。

ただの勢いではなく神がかった正確性の連続が生んだ歴史的瞬間だったと言えるのでは。

ただ、全米のレースは見てないがそれだけ繊細な動きだけに脆さもあるのかもしれないが。


残念だったのはゴールタイマーが実際のタイム付近でストップしなかったこと。

ゴールした時にタイマーを見て「いった!世界新!!」という瞬間を味わえなかった。
まぁ今回のようなパターンも珍しいのでこれはこれでありか。




〜了〜






DLモナコ

続いてDLモナコ


200m +0.1m
エドワード 20.10
マルティナ 20.29
ブレネス 20.33
飯塚 20.39
フォルテ 20.40
マルティネス 20.56
エリントン 20.59

エドワードは久し振りのDL勝利だったっけか。

上体のバランスが僅かにずれているようにも見えるが、実際は上手く下半身の動きと連動していて可動域にも余裕を感じさせる。 

現にコーナー、そして直線への繋ぎは誰よりもスムーズでそこが大差をつけることができた要因ではないか。

メダルは微妙に難しいかもしれないが常に上位にいる安定感はやはり素晴らしい。


ルメートルは良くはないがギリギリ間に合わせることができるかどうな。そんなポジションであることは証明できたか。

キレやスムーズさには欠けるがダイナミックな動きは健在。
本調子でない自身の動きに対して強引に処理しているようにも見えるが、その中でも丁寧にレースを構築するクレバーさを感じる。

決勝は狙える位置だと思うがはたしてどうか。


マルティナもさすがベテラン。
五輪年はしっかりと上げてくる。
しかしルメートル同様に全盛期のスピードに欠けることが課題か。

コーナーも安定感はなくバラついているところもあると思うが、ピッチと効率的な接地によるものだろうか、どうにかこうにか帳尻を合わせてくる走りはやはり凄い。


飯塚選手は海外レースのタイムとしては悪くないが、上位とは差があった。

ただ今季10.06、20.18のフォルテ、同20.19のマルティネス、同10.04、20.31のエリントンらに勝っていることは大きい。

オリンピックはどこまでいくだろうか。

正直、飯塚選手が後半追い上げて颯爽と海外勢を抜き去るパターンは想像できない。

となると前半である程度のポジションにいないと厳しいことは間違いない。
しかしスピードには差があるのでやはりコーナリングの出来が鍵になるのだろうか。

とりあえず今回は合格点以上だったのではないかと思うが。




400m
ファン・ニーケルク 44.12
セデニオ44.34
タプリン44.38
マッケイ44.79
マクワラ44.90

ファン・ニーケルクは相変わらずの安定感。
前半はどこまで抑えているのか分からないが、かなり余裕を持っていたように見える。

もちろん流すとかそういった抑え方ではなく、しっかりとレースを構築した上での余力の残し方だと思うので、そういったところに盤石の強さを感じる。
この日の調子でも43.7〜8位は出たのではないだろうか

更にはピーキングにも優れているのでやはりオリンピックの優勝候補筆頭か。

セデニオとタプリンも好記録。
それでも本番での決勝進出ラインにのるかどうかではないだろうか。
それ位に今年も400mは層が厚いように思う。




〜了〜

全米選手権2016

今更ですが全米ネタ。

100m +1.6m
ガトリン9.80
ブロメル9.84
ブレイシー9.98
ロジャース10.00
ゲイ10.03

ここにきて9.80。
上位2人以外は好記録というわけでもないので、純粋に調子を上げてきたと見て
よさそう。

やはりガトリンはスタートで決めてしまう。
後半やや乱れそうな気配はあったが上体をやや前傾して上手く力みを回避し、減速を最小限に抑えたのではないか。

ブロメルも好走したがガトリンに勝つ要素はこのレースではなかったように思う。
しかし本番の強さは今季も健在なので、オリンピックでは優勝の可能性もゼロではないと思う。

そして意外と言っては失礼だがブレイシーが3位。
タイムは上位2人に離されたが、ロジャース、ゲイに勝って代表権を見事に獲得した。




200m+1.6m
ガトリン19.75
メリット19.79
ウェッブ20.00
ライルズ20.09
ノーマン20.14
ゲイ20.38

メリットとの激戦を制したガトリンが二冠。

というか、メリットが出てること自体知らなかった。
残念ながらオリンピックでは先に制した400mに絞るようだが専門外でも力を見せた。

しかし動きに余裕を持っていたのはショートを戦場とするガトリンの方か。

コーナーから力強さを見せつつもリラックスして直線でスムーズに切り替え、終盤は多少力みながらも上手く配分した余力でリズムを保ったように見える。
やはり一歩一歩の馬力の差によって余裕が生まれるのではないか。また結果的にはアウトレーンだったのも良かったかもしれない。

反対にメリットは僅かに突っ込みすぎたか全体的に力んだように見える。
まあガトリンに勝つなら戦略的に間違っていなかったと思うが、200mにおける場数の差が出たといったところか。
それでもハイレベルな争いを演出したことは本職に繋がるのでは。

少し心配していたウェッブは無事に代表入り。
ライルズ、ノーマンとジュニアも大健闘したが、スピードとキャリアが上回ったか。
しかし繰り上げで代表したライルズのしぶとさも侮れない。

また100mに続きゲイは落選。
大阪世界陸上の頃から9年経った今でもトップクラスであること自体が実は凄いことだと思うが、代表入り出来るだけの力はもうなかった。



〜了〜

ジャマイカ選手権2016

100m +0.7m
ブレイク9.95
アシュミード9.96
ミンジー10.02
パウエル10.03
ベイリー・コール10.03
ボルトDNS


ボルト選ばれましたね。

オリンピックに出なければどれ位の経済的損失になるのだろうかと勝手な心配をしました。

他のプロスポーツに比べて選手自体の市場に対する直接的な単価は安いかもしれませんが、テレビ局の放映権やからなんやら考えたら計り知れないロスになるのかもしれません。


さて、レースの方は復調してきたブレイクが優勝。
まだまだ仕上がっていないがトップでゴールできるのはやはり技術的な面が大きいのではないかと思う。

競りながらも淡々とレースを構築する基盤があり、そこに関してはどんな展開であれ大きく飲み込まれることがない。

ロンドン五輪の決勝も大差はつけられたがやはり素晴らしい走りだったんだなと改めて思う。

パワー自体はアシュミードの方があったように思うが、正確性とそこから生まれるスムーズさでタイム差以上に圧倒したといえるのではないか。

そしてパウエルは3位内にも入れず。
こちらもパワーはある程度健在だが、スタートに鋭さや迫力がなかったか。
散々世界大会で見てきた選手だが、やはり不在となると寂しいものがある。


200m -1.5m
ブレイク20.29
アシュミード20.45
フォルテ20.45
ウィアー20.50

ブレイクが二冠。
100m以上に仕上がりは悪いが、やはりこちらも自身のリズムを崩されることはなかった。

フォルテも前半健闘したが、最後まで持たなかった。

ブレイクはどこまで復調するだろうか。
9.80、19.70あたりまでいきそうな気もするが世界大会のブランクもあり正直よくわからない。

ひとまずは、よく帰ってきてくれました。
やはり名スプリンターですね。


〜了〜